1. ARP(Address Resolution Protocol) をオペレーションシステム内に実装する 場合には、どのような点に注意すべきなのか理由と共に述べよ回答にあたっては、 ARP プロトコルの特徴とオペレーティングシステムでの実装の制限を良く考え回答 すること。★★この問題では、ARP の実装について特定のデータリンクに依存しない注意点を 記述してもらうのが目的。第 1 項目が一番重要と考える。第 2 項目以降は セキュリティ保全のために必要となるが、補足的な注意と考える。
- 各パケット送信毎に ARP を起動するのは性能上大きなペナルティとなる。 したがって、性能を劣化させない機構が必要。一般には ARP の結果をキャッシュ する機構が必要になる。具体的には、
- キャッシュの実装は、高いスループットを与える構造になっていなければ ならない。つまり、キャッシュテーブルの登録、検索がオーバーヘッドが小さな 形での実装をする必要がある。
- ARP の結果をキャッシュする場合、キャッシュの内容を手動で追加したり、 あるいは、削除するインタフェースが必要。そのときに、手動で追加したもの については、ARP の結果よりも優先するかどうかの決定を明確にする必要がある。 (現在の実装では手動で追加したものが優先される。)
- キャッシュ内容の破棄方法、および、タイマの設定を最適化する必要がある。
- IP アドレスに対応するデータリンクアドレスとしてブロードキャストアドレス を返すものをブロックするような実装は必要。
- 例えば Ethernet Meltdown を防止するため
- セキュリティ上の配慮が必要
- ARP テーブルの更新履歴を記録する。
- 一般ユーザが ARP の応答を生成できないようにする。
2. 現在の LAN 環境の構築では、一般に光ファイバケーブル (optical fiber cable) よりもより対線 (twisted-pair cable) を利用したシステムが広く使われている。 例えば 100Mbps Ethernet でも光ファイバを用いた 100Base-FX よりもより対線に よる 100Base-TX のものの方が広く使われていることを挙げることができる。 これはなぜだろうか。理由を複数回答せよ。★
光ファイバとより対線について、デバイスの製造コスト、運用条件などについて議論 を行なうことが目的。以下の項目が解答例として考えられる。複数解答を要求して いるので、3 項目の記述で満点。
- 光ファイバ用の受光素子の製造コストは、より対線のアタッチメントの製造コスト よりも非常に高い。2 桁程度の差がある。したがって、より対線のネットワーク インタフェースの方が安価に提供できる。
- 既により対線を用いたネットワーク環境がたくさん存在しているので、 既存の環境からの移行を考えた場合、既設ケーブリングを利用することができる。
- 新たなケーブルの敷設を考えた場合、より対線による敷設コストは光ファイバの 敷設コストよりも安い。
- 光ファイバケーブルはより対線と比較して物理的な強度配慮が少なくすむ。 光ファイバは折れ易いので取り扱いに注意が必要。
3. 現在 Differentiated Service(DiffServ) は注目を集め、多くのネットワーク機器 ベンダが積極的に技術開発を行ない、また、インターネットサービスプロバイダ (ISP) がその利用を検討している。ISP ビジネスの構造と技術の両面から、この理由を説明 せよ。★★★
レポートと同様の問題を出してしまったのでサービス問題であるが、ビジネス面の 議論を問題として要求しているので、技術面だけの議論でビジネス面での議論が無い ものは不可。例えば、以下のような解答が望まれる。
4. IPv4 ヘッダに用意されている TTL(Time To Live) フィールドは、もともと パケットの生存時間を秒単位で記述するという仕様になっていた。しかしながら、 現在の実装ではゲートウェイ通過数として扱われている。このような実装に 変わってしまった理由を述べよ。★
- DiffServ を実現することにより、ISP は従来の単なる best-effort 型の インターネットサービスだけではなく、semi-guranteed なサービスを複数作り 上げることができる。これにより、性能面での違いのあるサービス品目を複数 作ることができることから、料金体系を多様化でき、いわゆるプレミアムサービス が提供できるようになる。端的に言えば、ISP にとって DiffServ は、お金を 稼ぐ新たなフレームワークを提供できること。
- DiffServ では「高い料金を払ってトラヒックを優先し、伝送する」という サービスが構成できる。これはネットワーク運用面から考えた場合、輻輳状態 の解決に対してより積極的なパケット廃棄を規定でき、輻輳状態の解決を容易に する。
以下の項目が書かれていれば良い。
- TTL フィールドで表現できる時間と、実際の伝送時間には大きな隔たりがある。 現在の伝送時間はミリ秒からナノ秒のオーダに入っているときに、秒単位での フィールドは意味が無い。
- リンクでの通過時間を正確に計測する技術を実装することは、莫大なコスト 上昇に通じる。
- パケット毎の伝送時間の計測は莫大なコスト上昇に通じる。